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第2分科会 【同志社香里中学校・高等学校】

テーマ 中学校・高等学校における起業家教育の取組
〜中1地理「海外旅行の企画を売り込もう!」等を事例に〜
発表内容 香里中高において起業家教育に取り組むこととなった
経緯および具体的な実践例の紹介
発表者 藤井 宏樹教頭

発表概要

 発表者はまずグローバル化やAIの進化等による社会の変化に対応するために、「学びに向かう力・人間性等」を養うべきであるとする学習指導要領の改訂のポイントに着目し、文部科学省が大学入試改革と並行して、小中高においても「主体的・対話的で深い学び」いわゆるアクティブ・ラーニング等を取り入れるようになった経緯を説明した。
 香里中高の卒業生でもある発表者は体験活動重視であった自身の学びの経験をもとに、それらは受験指導をする必要のない本校では随分前から取り組んできたものであるという点を指摘した。次いで、教員として母校に赴任した当初は、それまでの実践を継承することに力を注いだが、自分の研究テーマが見つからない焦りを感じ、研修や研究会に参加するなかで起業家教育やPBLの手法と出会い、1999年度中3公民「会社をつくろう」、2003年度中3公民 「コンビニを通して社会を見る」(近畿経済産業局「起業教育モデル授業」)、同「大阪企業家列伝」(大阪企業家ミュージアムの中学生向け教材)、2005年度高3経済「宅配便から社会を見る」(金融広報中央委員会「金融教育モデル授業」)等の授業を開発してきたとのことであった。
 そのなかで起業家教育、起業教育、経済教育、金融教育、シティズンシップ教育など、縦割り行政の影響で類似したものが次々と公表されるに及び、次の方法で体験活動を伴う諸教育の意義を明らかにすることを試みた。即ち@各省庁や団体が掲げた教育目標、すなわち「児童・生徒に育成すべき資質や能力」を整理する。A生徒にどのような資質や能力が身につけば良いか(理想)、そして現在(プログラム開始以前)どの程度身についていると自覚しているかを調査する。Bプログラムを実施した結果、どのような資質や能力が身についたと思うかを調査する。Cプログラムのうち、どの活動がどの資質や能力の向上に関係しているのかを詳細に分析する。その結果、育成したい資質や能力によって、効果的な体験活動が異なるという結論を得た。具体的な内容は発表者が用意した資料を参照されたい。
 この成果をもとに2006年度中1地理的分野で取り組んだのが「海外旅行の企画を売り込もう!」である。本実践の活動は多岐にわたるのでここではポイントだけ紹介しておく。まず夏休みの宿題として一人ひとりが海外旅行のパンフレットを作成し、2学期の授業で1分間プレゼンを行う。その後、数人で会社をつくって3分間プレゼンと会社ロゴとテレビCM絵コンテを考えそれぞれ発表する。その過程において、留学生や青年海外協力隊経験者、旅行社の社員とのワークショップや街頭インタビューを行う等、学外(社会)とのつながりを持たせることを課した。さらにその都度相互評価と自己評価を通して振り返りを行うことで、将来必要となる思考力、判断力、表現力のほかに、文部科学省が目指す「学びに向かう力・人間性等」を養うことができると指摘された。
 その後もバージョンアップを続けながら、中2歴史「同志社香里中学2年生がつくる『中学歴史 一問一答式問題集 & 語呂合わせ歴史年代暗記法』作成プロジェクト」、中3公民「ビジネスアイデアを考えよう!」、中1地理「お国自慢大使になろう!」(お国自慢クイズ大会)等、新たな実践もいくつか紹介された。
 まとめとして、アクティブ・ラーニング型授業を構想するにあたっては、@目的と方法を明確にすること、A必要な手立てを行うこと(体験活動や社会とのつながり)、B一人で探究することだけでなく、役割や立場の異なる複数で話し合ったり、インタビューしたりすること、Cinputしたものは必ずoutputさせること、D相互評価と自己評価、振り返りをさせること、E可能であればPBL型にしたり、シミュレーションを導入したりすることが必要であると指摘した。さらに若い先生方には@自ら出かけて新しい情報を仕入れる、A常に自分に何ができるかを考える、Bとりあえずやってみる(それから改善)ことを勧め、今一番「起業家精神」が必要なのは教員自身であると述べて発表を締めくくられた。

第2分科会 【同志社香里中学校・高等学校】
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