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第4分科会 【同志社女子中学校・高等学校】

テーマ 授業実践
発表内容 「新聞リレーノート」の試み
発表者 山田哲久

発表概要

同志社女子高校国語科で、3年前から実施している「新聞リレーノート」の取り組みについて、その主旨と実践例とを報告した。
まず、「新聞リレーノート」とは、7〜8人を1グループとし、「記事選択者が選んだある新聞記事への意見について、班のメンバーが意見をリレーしていくもの」である。ここで重要なことは、意見を述べる際は、必ずそれまでに出た意見を踏まえなければならないということである。すなわち、記事を読み、意見を読み、それを批評しつつ自分の意見を構成し発表する、という作業をすることになる。この取り組みによって、現在社会的に求められている国語力――読解力、論理的思考力、批評力、文章構成力の向上を図りたいと考えている。
さらに実践例を挙げつつ、問題点や取り組みの効果を解説した。まずはよくある問題として、「記事選び」の難しさを指摘した。記事選択者が適当でないテーマの記事を選んでしまうと、議論にならないというものである。具体例として挙げたのが、社会的な視点からの分析が難しいもの、論証に専門的な知識を要するものである。この解決策としては、教員がコメントで記事を選択する際のポイントを説明する、あるいは慣れるまでは教員側で記事を選んでしまうなどの方法が考えられる。
最後に、リレーノートを継続して行った学年の途中経過を報告した。現高2生が1年前の高1時に行ったリレーと、今年度の5月に行ったリレーとを提示し、比較を行った。その結果、高1時には情緒的、道徳的な「感想」の羅列にとどまってしまっていたのものが、1年後には客観的な視点からの「意見」を含めた議論になっていることを示すことができた。

これらの例から、「新聞リレーノート」によって生徒たちには社会的な国語力が少しずつ身についているのではないかと考えられる。ただしグループごとに力の差があるのが現状である。教員はコメントを通じて、そのグループの力に応じた指導をすることで、生徒の国語力を高めていかなければならない。
分科会の様子

分科会の様子

 

質疑応答

  • 失敗例としてどのようなものがあるか。
    (答)情緒的、道徳的な「感想」や、自らの希望を述べるだけになってしまっているものは一定数見受けられる。これは記事選択が不適当であったり、生徒に「きれいにまとめよう」という意識がはたらいた結果と考えられる。
  • 「批評する」ことを重視していく中で、生徒が「批評」をされて傷ついたり、トラブルになるようなことはないか。具体的にどのように配慮、指導をしているのか。
    (答)現時点でトラブルになったことはない。現代文など、日々の授業の中で、「批評」と「否定」の違い、「批評」の重要性を説明している。さらにリレーノートをやっていく中で、意見の批判は人格の批判ではないということも、強調して伝えるようにしている。
  • 「リレーノート」の取り組みを、普段の国語の授業とどう関わらせていくのか。
    (答)本校で高3生に課している「卒業論文」の指導においては、「リレーノート」の経験を有効に活用できていると感じる。
  • 生徒が意見を述べる中で、新聞記事にない内容を自分で調べて書くということを推奨しているのか。
    (答)原則は記事の中の情報で議論をするものと考えているので、推奨はしていない。ただしそこにない情報を引用するときは、必ず出典を明確にすることという指導はしている。
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