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総長スピーチ集

2016年度同志社大学入学式祝辞(2016年4月1日)

同志社総長 大谷 實

 一言お祝いを申し上げます。同志社大学新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。難関を突破してのご入学、心からお祝い申し上げます。また、ご父母およびご家族の皆様にも、衷心からお慶びを申し上げます。

 さて、新入生の皆さんは、同志社大学を自ら選んで入学されたのですから、おそらく、同志社がどういう学園であるかについては、十分、ご存知かと思いますが、今日は入学式でもあり、大学生活のスタートを切る記念すべき日でもありますので敢えて申しますと、同志社の教育・研究の目標は、キリスト教主義、自由主義または自治・自立主義、国際主義の3つの教育・研究を柱とした良心教育にあります。そして、その最も重要なものは、言うまでもなくキリスト教主義教育であります。

 一方、同志社の創立者・新島襄は、1888年に有名な「同志社大学設立の旨意」を発表したのですが、そのなかで新島は、「同志社大学の設立をもってキリスト教を布教させる手段とか伝道師養成の目的とみなす人がいるならば、それはいまだ私たちの考えを理解しない人である。私たちの志すところは更に高い。私たちは、キリスト教を広めるために大学を設立するのではない。ただ、キリスト教主義には本当の青年の精神と品行とを磨く活力が備わっていることを信じて、この主義を教育に適応し、さらに、この主義でもって、品行を磨く人物を養成したいと願うだけである。」と明言しました。

 同志社は、キリスト教主義の学校ですが、キリスト教の伝道を目的とするミッションスクールではないのです。しかし、新島は、「キリスト教主義を教育に適用し、さらにこの主義をもって品行を磨く人物を養成したい」と願い、大学教育の目的は、単に技術や学問を教えるだけではなく、「良心の全身に充満した人物」「良心を手腕に運用する人物」を養成することにあると宣言したのです。

 こうして、同志社の建学の精神、同志社ブランドは、良心教育に帰着するのですが、それでは、同志社の学生として、皆さんは、具体的に、どういう目標で学習や研究に取り組むべきなのでしょうか。

 創立者・新島襄は、三つの点を重視しました。まず、大学の学生生活で、何よりも大切なのは、教養を磨き、学問に没頭すべきだということです。新島は言います。「学力がなければ、人々の敬意は受けられません。無知のゆえに嘲笑されることがあってはならないのです。私たちの学校を魅力的なものにするためには、ほかの学校に遅れをとらないこと、それどころかさらに先を行くことが絶対に必要です」と述べ、「蛇のように賢くあれ」と言う聖書の言葉を覚えて実行すべきであると説いています。私は、同志社総長として、同志社大学の学生の皆さんには、熱い思いで学問に取り組み、学力の点で一流の学生になって欲しいと願っています。

 第2に、専門の学習や研究にとどまらないで、人間としての生き方を学び、物事の判断について、独自の見識、自分自身の価値の物指し・尺度を持ち、広い視野から社会、国家そして世界の将来を展望して、自分の意思で、主体的に行動できる人間となっていただきたい。つまり、知識があり、品格があり、自ら立ち、自ら治めることができる国民、自立した存在となって欲しいのであります。

 新島は、「一国を維持するのは、決して2、3の英雄の力ではない。実に一国を形成する、教育があり、知識があり、品性の高い人たちの力、一国の良心というべき人達の力」によらなければならないと述べているところです。私は、皆さんに、是非、「一国の良心というべき人物」、社会のリーダーとなって欲しいのであります。

 第3に、「倜儻不羈(てきとうふき)」なる学生として、活動して欲しいということであります。新島襄の遺言の中に、今では有名となっている、「倜儻不羈なる書生を圧束せず、努めてその本性に従い、これを順導し、もって天下の人物を養成すべき」という一節があります。その意味は、「信念と独立心とに富み、才気があって常軌では律しがたい学生すなわち「倜儻不羈」なる学生を押さえつけることなく、個性を伸ばすように教育しなさい」ということですが、皆さんには、是非、少々乱暴者といわれるような、逞しい人間、つまり、「倜儻不羈」なる学生であって欲しいのであります。同志社の卒業生は、上品だけれども、逞しさに欠けるという世間の評価を、是非、覆して欲しいと思います。

 新入生の皆さん、このような良心教育を標榜する同志社大学に入学された以上は、専門的な学問の研究と併せて、人間としての生き方を常に自覚されて、良心碑に刻まれている「良心の全身に充満したる丈夫」を目指して、大学生活を全うされますことを期待し、入学式の祝辞とします。

 本日は誠におめでとうございます。

 

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