同志社の一貫教育

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学生が語る同志社の一貫教育

卒業生パネルディスカッション 同志社の一貫教育

コーディネータ/

  大久保 雅史(一貫教育委員会幹事・理工学部教授)

 

パネリスト(※学年は収録時)/

  吉岡 俊哲(国際高校出身、法学部[法] 3年)

  𡈽井 薫子(同志社中高出身、法学部[政] 4年)

  南  枝里(香里中高出身、生命医科学部[医生] 4年)  

  寺井 唯 (女子中高出身、女子大薬学部[医療] 4年) 

 


 

将来への進路を決定づけたのは中高時代

大久保 今日は同志社の一貫教育を体感した学生さんたちをパネリストに迎えて、一貫教育の良さを語っていただきます。まず、自己紹介をお願いします。

吉岡  同志社国際を卒業して現在、法学部法律学科の3年生です。知的財産法ゼミに所属し、法学研究会というサークルにも入って大学生活を送っています。

寺井  私は同志社女子中高出身で、同志社女子大学薬学部の4年生です。大学では生化学研究室に所属して、細胞内のたんぱく質の輸送システムである小胞輸送について研究しています。

   同志社香里を卒業して、生命医科学部に在籍しています。大学では中高の部活で続けたテニスのサークルに所属していましたが、今は卒業研究に打ち込んでいます。

𡈽井  同志社中高を卒業しました。現在法学部政治学科の4年生です。国際関係ゼミに所属しています。

大久保 さて皆さんは、どの時点で今の進路を意識しましたか? さらに卒業後は、どんな分野の職に就きたいと考えていますか?

吉岡  高校に入る前から法律に興味がありました。僕たちの世代の特徴ですが、木村拓哉主演のドラマ「HERO」の影響で、検察官や法律家ってカッコいいなぁと思って。元来、僕は理屈っぽくて、法律で理屈が通っているものをみると「きれいだなぁ」と思うあたりが向いているのかなと思います。入学後は所属する法学研究会の活動やいろんな方との関わりの中で、企業法務という職に興味を持ちました。いまは英文契約などの授業を履修したりして、そちらに向けて勉強しています。海外生活が長かったので、将来的にはまた海外に飛び立てることができたらなぁと思っています。

寺井  私が薬学部に決めたのは高校の時です。もともと薬に興味がありました。薬剤師になるというより、むしろ薬そのものについて知りたかったのが動機です。化学は好きで得意だったというのもあるのですが、母がアスピリン喘息を起こす体質で、本来なら病気を治すはずの薬にそういう副作用があると知り、薬に興味を持ったのがきっかけでした。薬学は6年制なので、あと2年あります。将来の進路については5年生の臨床実習で、自分が臨床、研究どちらに向いているのかを判断して決めようと思っています。

   高校の時の二つの出来事がきっかけで、将来は絶対に医療関係の仕事に就こうと考えていました。生命医科学部医生命システム学科を選んだのは、医学部でも薬学部でもない、より臨床に近い学科だと思ったからです。就職活動では食品業界や化粧品業界も見てまわりましたが、やはり製薬業界への思いが強く、来春から外資系製薬会社のMRとして働きます。子どもの頃から私はアトピーでステロイド剤を使っていたのですが、ステロイド剤は飲み方が難しく、リバウンドを経験して、全身に包帯を巻きながら高校に通っていた時期がありました。薬への信頼が揺らぐという衝撃的な体験をして、他の人には私と同じような思いをしてほしくないと思ったんです。もう一つのきっかけは、中高でテニスを教えてもらっていたコーチが急死されたことです。コーチに今までの感謝の気持ちを伝えることができなかったことも、医療業界への進路選択に影響したと思います。

𡈽井  私は高校2年の時に1年休学してドイツに留学しました。そこで世界各国から来た留学生と知り合い、国や言葉を超えて仲良くなれることを実感しました。中国や韓国の人とも個人同士は仲良くなれるのに、国を通すとなぜうまくいかないのかと疑問を持ったのがきっかけで、政治学科で国際関係を学ぼうと思いました。大学入学後は3年生の夏に金融業界のインターンをして、金融業界のダイナミズムや、マーケットが国際政治によって左右されることに興味を持ち始めました。進路は外資系の投資銀行に決めました。


行動力で物事に挑んでいく姿勢は誰にも負けない

大久保 将来の進路は高校あたりで決まっていたようですね。進路とは別に、正課でも課外でも高校時代に夢中になったこと、あるいは大学入学後、夢中になったものはありましたか?

吉岡  国際では男子寮に入っていたのですが、門限がなんと午後7時だったんです。授業が終われば部活をするか、寮に帰ってぼ〜っとするかしか選択肢がなかったので、剣道部に入って3年間頑張りました。おかげで二段が取れました。大学入学後は、ネゴシエーションという国際商事仲裁と交渉に関する活動に熱中しています。

大久保 ネゴシエーションといのは実践ですか、シミュレーションですか?

吉岡  「インターカレッジ・ネゴシエーション・コンペティション」という、住友グループが後援する大会です。10月に課題が発表され、それに向けて準備をします。大会では審査員として実務家の方が来られるので、学生の視点からでは分からない知見もいただけて、とても勉強になります。

寺井  私は中高6年間バスケットボールに明け暮れていましたが、女子中高では定期試験前1週間は基本的に部活が休止になるため、その間は必死で勉強しました。大学では研究活動を熱心にやっています。世界で誰も知らないことを、自分が実験して結果を得て分かっていくということが、すごくモティベーションになっています。

大久保 研究以外にスポーツなど、取り組んでいることはありますか?

寺井  スポーツではないですが、長期休暇を利用してよく海外に行きます。一番印象深かったのはカンボジアでのボランティアです。2週間現地にホームステイしながら、現地の子どもたちに日本語と英語を教えました。

   私は中高大と10年間テニスを続けています。4歳から17年間、ピアノも続けています。一貫校でないと、どちらもここまで続けるのは無理だったと思います。続けることによってスキルを磨けただけでなく、協調性や行動力、人間性みたいなものが養われていたことを、就職活動を通じて感じました。私だけではなくて、学内校の人たちは自分のやりたいことを就職活動前から持っていて、その目標に向かって一直線に進んでいることを感じました。大学入試を経験していない分だけ学力的には劣るかもしれませんが、行動力で物事に挑んでいく姿勢は、入試を経験した人たちに負けないと思います。

𡈽井  私は中高で6年間、硬式テニスをしていました。部活以外でも、中学や高校の時の体育祭や学園祭などのイベントがあるたびに、みんなを引っ張って一生懸命やった経験が自信になっています。おかげで大学に入ってからも単身ドイツの法律事務所に乗り込んで3か月ほど働かせてもらったり、サマーインターンに挑戦してみたり。今は女性のキャリア形成について企業と活動しています。そういうことを自分でやろうと考えたのも、中高時代のみんなと協力して成し遂げた達成感、その辛さ、楽しさ、やり甲斐を経験したからかなと思います。

大久保 中高大と、同じ仲間とずっと一緒に過ごすからこそ感じられる達成感ですね。

   ただ一貫校では人間関係が固定化しやすく、価値観が偏るのではないかという危惧はあります。中高6年間、委員長をやったり、イベントがあるとリーダーシップをとってやってきたりしたことは自信になってはいますが、大学のサークルでキャプテンをやった時、仲間は出身高校も育ち方もバラバラで違う価値観をもっているので、けっこう挫折を味わいました。今でこそ、その経験が活きて、違う価値観や多様性を受け入れることが 自分の成長につながることを実感しています。


時間を気にせず徹底的に取り組める環境

大久保 こうして皆さんのお話を聞いていると、中高時代を漫然と過ごしてきた自分が恥ずかしくなりました(笑)。やはり中高時代に夢中になれるものがあるのは、人格形成上とても大切なことだと改めて思います。受験がないことで何かに夢中になって打ち込める、あるいは将来の進路についてじっくり考えることができるなど、一貫教育の利点がみえてきたように思います。受験しなかったことのメリット、受験をしたからこそのメリット、あるいはその逆のデメリットについてはどう思いますか?

吉岡  受験という心理的プレッシャーがなかったので、のびのびとした高校生活が送れました。そう言うと遊んでいただけと思われるかもしれませんが、大学に入り、受験を経て入学した人と比べてみると、他の学生が身につけていないものを自分は持っていることを実感します。国際高校という特殊な環境だったせいもありますが、圧倒的な英語力の高さやプレゼンテーション能力の高さなどがそれです。それがメリットの一つかなと思います。ただ受験を経ていないので、入学直後は大学の授業についていけるのだろうかという不安があったのも事実です。でも、ふたを開けてみればついていける人が大半だったので、杞憂に終わりました。

寺井  高校の勉強では、私は化学が好きでした。大学の授業で困らなかったのは、高校の化学の先生が大学レベルに少し触れるところまでやってくださっていたおかげだということが、大学に入って分かりました。高校の化学では実験が終わると必ず実験ノートを書かなければならず、すごく大変だったのですが、その実験ノートの書き方が大学の実験レポートとほぼ同じだったんですね。おかげで大学でもすんなりと実験レポートを書くことができ、化学が好きでいられました。実は私は内部推薦ではなく、公募制推薦入試で大学に入った変り種です。受験はその時だけの一発勝負だからこそ、集中して密度の濃い勉強をする必要があります。もし内部推薦であれば、あそこまで集中して勉強していなかったと思います。一方、一貫教育の中で育ってきて、その良さも実感します。同じ勉強をするにしても時間に拘束されないから、一つの問題を何時間でもかけて解くことができます。そういう環境によって問題解決能力が養えたと思います。受験勉強では一定時間を過ぎると解答をみるしかなく、そういうところが私はすごく嫌でした。

   英語の授業では、誤答ノートというものと、間違えた箇所10回書きというのがありました。さらにそこには、なぜ自分がそこを間違えたのかを書く欄もありました。時間を気にせずそういうことに取り組める環境があるのが、一貫教育の良さだと思います。なぜ自分が間違えたかを考える癖は、大学に入ってからも随分役立ちました。

𡈽井  何をしに学校に来ているのかという点に違いがあると思います。私の兄二人は超進学校に行っていました。それを見ていると、学校が受験勉強のための「予備校1」みたいな感じでした。私の場合は勉強も好きでしたが、委員会だったりクラブだったり学園祭だったり、そういうもの全部をひっくるめて「学校」だったと思います。授業でも、自分なりのアウトプットを求められものが多かったです。ただ覚えるだけじゃなくて、じゃあ英語でプレゼンテーションをしてみようとか。オリジナリティーを出さないといけない課題が多かったと思います。受験がないメリット、私はこれを一番謳歌した人間だなぁと思います。高校2年で留学したことも、受験があれば採らない選択肢だったと思います。

大久保 もし中高時代にもう一度戻れるなら、何か希望することはありますか?

吉岡  僕は帰国生なので特に興味はなかったのですが、いまお話を聞いていると留学しておけばよかったかなぁと思います。大学より高校で留学する方が、学期のずれによる影響は少ないように思います。

𡈽井  高校の時にやっておけばよかったことというのが思いつかないくらい、充実していました。あえて言えば、せっかく受験がないのだから、もっといっぱい挑戦して、いっぱい失敗しておけばよかったなと思います。受験がないことで、大きな挑戦や大きな挫折がない人も多いと思うので。


中高時代に蒔かれた種が、将来を考えた時に芽を出す

大久保 ありがとうございました。ここで会場からの質問を受け付けましょう。

会場  同志社は新島襄のキリスト教主義になる学校ですが、そこで中高大と過ごされて、ご自身の人間形成にどういう影響があったのでしょうか。

吉岡  私は南山国際というカトリック系の学校から、中学に入る前にアメリカに行き、南アフリカに行って、今度は国際高校から大学までプロテスタントの学校で学びました。いろんな宗教観の中で育ってきたというのが実感です。私の学校生活では宗教に関する授業が多かったので宗教教育に焦点を絞ると、このような経歴が、異なる宗教の方に接する際の一助になっていることは間違いありません。インドに行ってもカーストに関する理解や知識があると、それで話が弾むということもありますし、異文化交流には一役買っているように思います。

𡈽井  逆に同志社中高を通して、宗教、キリスト教のお話はあまりなかったように思います。でも私は、新島先生の「良心を手腕に運用する人物」となれ、という教えがすごく心の柱になっているように思います。実は、中学や高校の時にはあまりよく理解できなかったのですが、大学生になると、どういう人間になりたいかを聞かれることが結構多く、そういう時に、ぱっと出てきたワードがそれでした。「そうだ、良心を手腕に運用する人になれば、私はそれでいいんだ」というところにたどり着いたんです。中高の時に蒔かれた種が、自分の将来を考えた時に芽を出す瞬間でした。そういう瞬間が私にはあったので、新島先生の教えは、みんなの心の中にも種となって入っているのかなと思っています。

寺井  「はつらつたる精神力があって真正の自由を愛し、それによって国家に尽くす」という新島先生の言葉があったと思うのですが、「真正の自由」と聞いてもよく分かりませんでした。聖書の授業では先生の説明を聞いて分かる部分もあるのですが、納得できない部分もあります。でも、すぐには分からないことがあることを知ることが大事なんだと、だんだん分かってきました。この言葉の真意は、いまだに理解できたわけではありませんが、心にかかる課題を与えてくれたのがリベラルアーツ教育なんだと思います。

   同志社はプロテスタントなので、あまり宗教色が濃いわけではありません。きわめて自由な校風です。それでも礼拝の時には心を鎮めて讃美歌を歌ったり、お祈りをしたりする。これは他の学校にはない特徴です。普段の会話でも中高の友人と思い出話になると、自然に新島先生のことや聖書の言葉が出てきます。体のどこかに教えが浸み込んでいるんだなぁと、いま質問をいただいて改めて思いました。

大久保 最後によい質問をしていただき、ありがとうございます。ここに登壇されている学生さんは、いずれも中高の時から明確な目標を持っておられるように感じました。「受験がないことでストレスがなく、やりたいことに没頭できてよかった」と言う一方で、「一発勝負の受験のプレッシャーがよかった」という意見もありましたが、明確な目的意識を持った学生さんは、受験を前提にしていない勉強によって得られるものが多かったということだと思います。それを下地として、大学入学後は多様性を獲得することによって世界が広がり、目標に向かってさらに邁進できることも分かりました。本日はありがとうございました。

卒業生パネルディスカッション「同志社の一貫教育」
同志社教職員研修会(2013年6月26日開催)より抜粋

 

学校法人同志社は、2004 年、全同志社規模で一貫教育の推進を図るため、総長のもとに、一貫教育委員会(委員長:竹廣良司・経済学部教授)を設けました。
同委員会は、一貫教育および推薦入学制度の調査・研究、一貫教育の推進事業などをつうじて、同志社一貫教育のあるべき姿を追求しています。

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