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総長スピーチ集

2014年度同志社大学入学式祝辞(2014年4月1日)

同志社総長 大谷 實

一言、お祝いの挨拶を申し上げます。本日は、同志社大学へのご入学、誠におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。また、ご列席のご父母、ご家族の皆様、お子様のご入学の姿をご覧になり、感慨一入のものがあろうかと存じます。本当におめでとうございます。

今日は入学式の日ですので、同志社の教育・研究の目標、言い換えますと、同志社のミッションについてお話したいと思います。同志社は、学校法人としまして、同志社大学、同志社女子大学のほかに、4つの高等学校、4つの中学校、2つの小学校、幼稚園、そして各種学校であるインターナショナル・スクールというように、14の学校を擁しております。そして、ここで学んでいる学生、生徒、児童及び園児は、現在、約4万2千人に達しています。学校法人同志社は、文字通り一大総合学園となっているのです。そして、それぞれの学校は、先ほど読み上げられました有名な「同志社大学設立の旨意」からも明らかなように、同志社の創立者・新島襄の建学の精神、いわゆるキリスト教を基本とした良心教育を、幼稚園から大学まで一貫した教育を実施しています。

同志社にあります14の学校は、学校の憲法とも言うべき「寄附行為」という規則、会社でいえば「定款」に当たるものですが、この寄附行為に基づいて、教育・研究を運営しています。その寄附行為第2条をみてみますと、同志社は、「教育基本法及び学校教育法に従い、キリスト教を徳育の基本とする学校を経営し、もって教育の実を挙げることを目的とする」と謳っているところです。つまり、同志社は、キリスト教主義の学校なのであります。

只今申しましたように、同志社はキリスト教主義の学校でありまして、本日の入学式もキリスト教の礼拝形式で行われている訳ですが、ここで注意していただきたいのは、同志社は、「キリスト教を教育の基本」としていますけれども、キリスト教を広げるため、言い換えますとキリスト教を布教するための学校、つまり「ミッションスクール」ではないという点であります。創立者新島襄は、先ほど読み上げました「同志社大学設立の旨意」の中で、「われわれは、キリスト教を拡張せんがために大学を設立するに非ず」と明言しました。大学の目的は、単に科学技術の知識を学習するだけでは不十分であり、これらの知識を運用する品性・精神が大切である、そのためには、道徳的・宗教的な考え方がなければならない。キリスト教を徳育すなわち道徳面での教育の基本とする以外にないと断言しています。

ところで、皆さんは、真理の探求を目指して大学の門をくぐられたはずでありますが、これまでの学問や学術の研究は、よく考えてみますと、「長生きをしたい」「健康でいたい」「ものを知りたい」「お金を儲けたい」「奇麗になりたい」といった人間の願い、少し悪い言い方をしますと、人間の欲望に従って、科学技術の開発に莫大なエネルギーを費やし、文化や文明の進歩・開発に成果をあげてきました。そして、科学技術の進歩が人類の福祉、「幸福」に貢献してきたことは、計り知れないと思います。

しかし、それが人の幸せ、人類の幸福に、常に繋がって来たかと考えて見ますと、それは全く別な話でありまして、むしろ、科学や技術の進歩が、却って人類を不幸にしている場合が稀でないことは、環境破壊や3年前の原発事故で思い知らされました。東日本大震災以来、大切なのは「物質文明より精神の文化だ」といわれるようになった所以です。過去70年に近い戦後の教育全体を通して、一番疎かになっているのは、人間の心の教育、精神の涵養、つまり「徳育」でありまして、最近になって、ようやく科学技術に偏った学問研究の在り方に反省が加えられているところであります。私は、学問を単なる真理の探求として絶対視する考え方は、改めなければならないと考えています。

創立者新島は、大学教育では、もちろん知識や科学技術の習得が重要であるけれども、それよりも大切なことは、「仰いで天に恥じず、伏して地に恥じることのない」、公明正大な、人間性豊かな人格を形成し、「良心を手腕に運用する人物、一国の良心たる人物になれ」、そして、「「地の塩」として働き、「世の光」として輝き、人を幸せにせよ」、そのためには、キリスト教の考え方に即した良心教育以外にないと考えたのです。
 
新入生の皆さん、皆さんの多くは、キリスト教に十分な理解を持たないで本日の入学式に臨まれたと想像します。皆さん自身がキリスト教の信仰を持つかどうかは一先ず措くとしまして、キリスト教を教育の基本としている同志社大学で学ばれる以上は、キリスト教と、それを基礎とした新島の教育に対する考え方を、是非、勉強して欲しいと思います。そうすれば、必ずや、今日の社会で求められている学問のあるべき方向を見出すことができるはずです。

これからの4年間、新入生の皆さんは、それぞれの専門分野で一流となることを目指して、切磋琢磨し精進してください。それと同時に、キリスト教および校祖新島が訴えた良心教育にも関心を払い、同志社人として誇ることのできる、道徳、品格を身につけてくださることを強く期待して、入学のお祝いの挨拶といたします。

本日は、誠におめでとうございます。

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