学校法人 同志社 事業報告書 2014
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6──2015年4月に開設された看護学部は、同志社女子大学として薬学部に続く医療系学部です。同志社と医療のかかわりについてお聞かせください。加賀 私立大学としての同志社の設立を悲願としていた新島襄は、学部としては神学部と法学部、そして医学部を備えた大学を構想していました。自前での医学部設立はかなわなかったものの、1886(明治19)年、京都看病婦学校・同志社病院の開設に至りました。これは日本で2番目の看護師養成機関です。岡山 1890(明治23)年に新島が早世した後、その経営は同志社から医師・佐伯理一郎に引き継がれ、1951(昭和26)年までに2000人以上の卒業生を送り出しました。そのお一人に話を伺う機会があったのですが、佐伯医師もまた敬虔なクリスチャンで、良質な医療人の教育をされていたそうです。看護学部ではこの志を受け継いでいきたいという思いがあります。──キリスト教と医療の関係は深いものなのでしょうか。加賀 福音書を読むと、イエスが病める人を治癒する場面がたくさん出てきます。私が思うに、当時の宗教家は身体だけでなく心も含めた癒やしを行ったのでしょう。healing(癒やし)の語源をたどるとwhole(全体)に行き当たります。つまり肉体とともに精神をも含む、人間の全体性の回復を目的としていたのではないでしょうか。 また新島自身も「病気のデパート」と称されるほど病弱だったため、医療や看護の大切さをよく知っていたのでしょう。医療を通じて感じたことが、「愛を以てこれを貫く」ことこそキリスト教の神髄という新島の信条と響き合うものがあったと考えられます。──翻って、現在の医療・看護において必要とされる素養はどのようなものでしょうか。岡山 少子超高齢社会にある現在、保健、医療、福祉の流れも大きく変わってきています。例えば私の若いころ、看護師は病院で病気を治すことへの支援に主眼を置いていました。しかし現在は入院期間が短くなり、病気を抱えながら自宅で療養生活をされている人、自らあるいは家族への健康の維持増進に努めている人が増えています。 そうした人々の健康や生活に、どう寄り添い支援していくかが課題となっています。従来通り治療を意味するcure(キュア)にも対応しつつ、健康や生活を守るという観点でcare(ケア)にも対応できる──。これが看護職に求められる時代になっています。加賀 学内を見渡すと、careについて深く関わる学部は他にもあります。薬学部、生活科学部、学芸学部音楽学科音楽文化専攻、現代社会学部社会システム学科ライフマネジメントコースなどです。例えばライフマネジメントコー同志社女子大学長、看護学部長対談新島襄の医療人育成への志を受け継ぎ女子総合大学の強み生かす—看護学部を開設同志社女子大学加か賀が裕ひろお郎学長同志社女子大学岡おかやま山寧やすこ子看護学部長2014蒼苑館エントランスにて

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