学校法人 同志社 事業報告書 2013
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学校法人 同志社 事業報告書20139ハイライトハイライト2研究健康増進につながる革新的な研究成果を達成研究推進体制の新たな枠組みを構築 同志社大学と同志社女子大学では社会の要請に応える研究を続けています。2013年は健康増進につながる研究成果がありました。アルツハイマー病治療につながる成果 同志社大学大学院生命医科学研究科の舟本聡准教授と大学院脳科学研究科の井原康夫教授らは、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβタンパク質を産生する酵素γセクレターゼの特性を解明し、アミロイドβタンパク質の生成を抑制する新しい方法を開発しました。 舟本准教授らは、まず酵素γセクレターゼがタンパク質C99の先端部分を捕らえて切断することにより、アミロイドβタンパク質を生成することを明らかにしました。さらにC99結合ペプチドがアミロイドβタンパク質の生成を特異的に抑制することを実験的に証明し、このC99結合ペプチドがC99自体の生成も特異的に抑制することが分かりました。 この研究成果は、副作用の少ないアルツハイマー病予防や治療に役立つことが期待されます。さらに、酵素が切断するタンパク質(基質)に着目した創薬手法は、がんなどほかの疾患にも展開できる可能性を持っています。 本研究は、ペプチドリーム株式会社の佐々木亨主任研究員と共同で実施され、同志社大学の西川喜代孝教授、高橋美帆助教らの協力も得ました。 研究成果は、13年10月に英国の科学誌『Nature Communications』のオンライン速報版で公開されました。URAセンター設置で研究推進体制強化 こういった優れた研究業績を持続的に生み出し、国際的な評価を確固たるものとするためには、研究者が研究活動そのものに専念できるよう、大学として研究マネジメントを推進する体制づくりが欠かせません。 同志社大学では13年秋に、研究活動のより一層の充実・発展を目指し、国や他大学の動向に注視しつつも「私学同志社」に最もふさわしい研究開発推進・支援体制を構築すべく、リエゾンオフィスや知的財産センターに加え、新たにリサーチ・アドミニストレーションセンター(URAセンター)を設置しました。URAセンターでは、リサーチ・アドミニストレーター(URA)がそれぞれの専門性を生かした「チーム」による活動を進め、従来からの研究単位である学部・研究科や研究センター等の枠を超えて、全学的な研究プロジェクトの開発・運営支援を推進します。 URAセンターの事業内容は、大きくは全学的な研究戦略策定に関する事項と個別の研究プロジェクトに係る申請から進捗管理、成果発信といった一連の活動支援に大別されますが、その対象は、理工系及び生命系を中心としつつも文理融合、人社系を含めた全ての研究分野にまたがります。URAセンターが大学の研究推進の核となり、研究者個人の努力の蓄積が大学としての研究力向上につながることを目指していきます。オキシピナタニンが世界初の特許 同志社女子大学でも革新的な研究成果が生まれました。薬学部の小西天二教授(現・特別任用教授)は11年、琉球大学、株式会社クレイ沖縄ほか2社と共同研究を進め、沖縄野菜クヮンソウから、高い睡眠誘発効果が認められるオキシピナタニンの安定的大量抽出に世界で初めて成功しました。そのオキシピナタニンが、13年6月5日に世界で初めて「睡眠改善剤」として中国で特許を取得しました。続いて8月23日に日本で特許を取得し、さらにほかの世界主要国38カ国で「特許査定」を受けました。オキシピナタニンは現代人の睡眠障害のリスク低減に役立つと期待されています。図1 アミロイドβタンパク質は2段階の切断により産生される2013年10月10日のNHKの取材に対応する舟本准教授アミロイドβタンパク質

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