学校法人 同志社 事業報告書 2012
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学校法人 同志社 事業報告書201211ハイライトハイライト2研究働きやすいオフィス照明や環境に優しい二次電池など革新的な研究成果で社会に大きく貢献 同志社大学と同志社女子大学は2012年度も、社会や時代の要請に応える革新的な研究成果を上げることができました。その一例が、同志社大学理工学部(インテリジェント情報工学科)の三木光範教授が開発した「知的照明システム」です。12年9月28日に東京国際フォーラム(東京・有楽町)で行われた「第10回産学官連携功労者表彰」(内閣府主催)で、環境大臣賞を受賞しました。必要な光を必要な場所に届ける 三木教授が開発した知的照明システムは、オフィス内で一人ひとりの社員の活動に最も適した明るさや色の照明を提供できる“適光適所”のシステムです。人工知能を搭載した照明器具がネットワークでつながり、各デスクの上にある照度センサの値を基に、明るさや色を細かく調整できます。 大規模ビルでは、1万台以上の照明器具があり、明るさと色の組み合わせは数億通りを超えると言われます。これまで、必要な照明を必要な場所にピンポイントで届けることは不可能でしたが、三木教授のシステムはそれを可能にしました。事務作業には「明るく白い照明」、クリエイティブワークには「少し暗めで暖かい色の照明」など、働きやすい照明環境を実現します。しかもこのシステムは、最もエネルギー効率の良い光を提供できるので、電力使用量とCO2排出量の削減にも役立ちます。 三木教授のシステムは、既に三菱地所株式会社の協力を受けて、東京駅前にある新丸の内ビルディング10階の「エコッツェリア」というオフィスに導入され、働きやすさと省エネを実現しています。さらに東京都内の5カ所でも実証実験が進んでおり、13年5月に竣工する東京駅近くのオフィスビルに実用化第1号として導入されます。低炭素社会に貢献する二次電池 同志社大学理工学部(環境システム学科)の盛満正嗣教授が開発を進めている「水素/空気二次電池」も、これからの低炭素社会に貢献するものです。 水素/空気二次電池とは、負極に水素吸蔵合金、正極に空気極、電解質にアルカリ性水溶液を使う新しい二次電池(蓄電池)です。放電では水を生成し、充電では水を分解するという、水だけを活性物質とする二次電池です。高エネルギー密度と安全性を両立できる「次々世代の二次電池」として注目されています。 こうした盛満教授の開発は、科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業・先端的低炭素化技術開発(ALCA)」の新規研究開発課題(12年度)に採択されました。電池・自動車・材料の各分野のメーカーも支援グループとして参加し、電気自動車や再生可能エネルギーの貯蔵、分散型電源などへの応用に向けた研究開発を進めています。今後10年程度を目標に、実用レベルの電池性能(エネルギー密度:1500Wh/L以上、500Wh/kg)の達成をめざしています。初期胚に栄養供給する機構を解明 同志社女子大学薬学部の和田戈虹教授と川村暢幸助教はバイオテクノロジーの分野で、革新的な成果を上げました。大阪大学の産業科学研究所と大学院医学系研究科、秋田大学大学院医学系研究科と共同で、哺乳類の初期発生胚(初期胚)に栄養を供給する機構を解明しました。 具体的には、マウスの初期胚を使って、初期胚が物質や栄養を得て増殖と分化が進行する際に、ミクロオートファジー(微小自食作用)という現象が起こり、その現象には「rab7」というタンパク質の機能(物質輸送を制御する機能)が必要であることを明らかにしました。これまで、初期胚への栄養供給や分化を制御する仕組みは明らかになっていませんでした。今回の共同研究の成果は、哺乳動物の母体内で受精から形態形成が起こる母子間相互作用において、新たな視点をもたらしたと評価されています。LED知的照明システムを導入したオフィス「エコッツェリア」水素/空気二次電池の概要と電池反応の仕組みO2O2H2OMHO2OH-OH-正極負極水溶液H+H+放電反応充電反応大気中の酸素を取り込む大気中の酸素を放出するMH:水素吸蔵合金

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