学校法人 同志社 事業報告書 2011
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4─2011年の最大の出来事は、3月11日に発生した東日本大震災です。 東日本大震災は、日本に大きなダメージを与えました。震災の被害に直接遭われた方々だけでなく、東京電力福島第一原子力発電所の事故のため、近隣住民の方々も、いまだに苦しい生活を強いられています。被災者やご遺族の皆様に改めて哀悼の意を表しますと共に、被災地の1日も早い復興を、心よりお祈りしています。─東日本大震災を契機に日本では、これまでの「物質文明」の時代から、「心の時代」「倫理の時代」にパラダイムシフトしなければならないという意見が出ています。 その点に関しては、様々な場面でお話ししているのですが、心の時代・倫理の時代には、「自分の人生をどう生きるか」を、一人ひとりが自覚することが大切だと思います。つまり、「個人主義」を徹底しようということです。 いま日本は、混迷の時代に入っています。国民の多くは、「何を目標にして人生を歩むべきか」について、思い悩んでいると思います。そうした状況を打破するにはやはり、一人ひとりが自分の人生を自覚しながら強く生きるという意味での「個人主義」が重要になると思っています。─新島襄の妻・八重は、まさに個人主義を貫いた人でした。 八重はあの時代の女性としては珍しく、自らの力で人生を切り開き、迷うことなくその道を歩み続けた人でした。個人主義というと「利己主義」と誤解されがちですが、私が言う個人主義とは、「良心に従って生きる自治・自立の人間」をめざすことです。 法律学者の立場から言いますと、日本国憲法第13条では、個人の尊重(尊厳)と幸福追求権を保障しています。すべての国民は個人として尊重され、公共の福祉に反しない限り、自らの幸福を追求する権利を持っているのです。つまり個人主義とは、この「幸福追求権」を大切にすることなのです。 個人主義を大切にすることは、震災からの復興にもプラスになります。まずは国民一人ひとりが八重のように、個人主義を貫いて生きることが大切です。それが、東日本大震災からの復興に欠かせない「絆」や、社会との「連帯・共生」にもつながってくるのではないでしょうか。─心の時代・倫理の時代には、同志社の「良心教育」が注目されそうです。 いまだからこそ、新島襄が掲げた良心教育が求められていると思います。幸いにして学校法人同志社は、幼稚園から大学院までの一貫教育体制を整えています。その強みを生かし、園児・児童・生徒・学生・院生の成長度合いや発達段階に合わせて、「キリスト教主義」「国際主義」「自由主義」を基礎とした良心教育を実践しています。良心教育によって、これからの時代にふさわしい高潔で優れた人材を世に送り出すことが、私たち同志社のミッションなのです。 また、少子化や国・公教育改革などの影響で、私学を取り巻く環境は厳しさを増しています。学校間の激しい競争を勝ち抜くには、学校法人同志社の特色やアンデンティティーを前面に押し出した教学の理念と、その実践が求められます。新島襄が掲げた「良心教育」こそが、同志社ブランドであり、そのブランドをアピールしていくことが、これからの競争を勝ち抜くカギになると確信しています。混迷の時代だからこそ求められる新島襄がめざした良心教育Message fromChancellor大おお谷や 實みのる総長からのメッセージ

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