学校法人 同志社 事業報告書 2011
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10 日本の大学にはいま、社会のあらゆる分野でリーダー層として活躍できる博士人材を育てることが求められています。こうした状況を受けて同志社大学は、大学院の教育改革を進めています。(1)博士課程と修士課程の目的を明確にする、(2)大学院の5年一貫制を実現する、(3)数値目標として、指導教員1人が3年間で1人の博士を育てる─などが柱になっています。全学費相当額を奨学金として給付 こうした大学院教学改革の一環として、同志社大学は2012年4月から、大学院研究科の博士後期課程の学費を、実質的に無償化しました。大学院の活性化・高度化を担う優れた若手研究者を育てるのが目的で、日本の大学院では初めての試みになります。 無償化の対象になる学費は入学金(初年度のみ)、授業料、教育充実費、実験実習料です。これらの学費に相当する額を3年間、奨学金として給付します。専門職大学院の「司法研究科」と「ビジネス研究科」を除くすべての研究科において、博士後期課程の入学時に34歳未満の学生が、給付の対象になります。 ただし、前期と後期を区別しない5年一貫制の「脳科学研究科」は、入学1年目から5年間、奨学金を給付します。給付の対象になるのは、入学時に32歳未満の学生(転入学時は34歳未満)です。最先端の脳科学を体系的に学ぶ その脳科学研究科(発達加齢脳専攻)は2012年4月に、学研都市キャンパスに開設されました。脳の働きは、人間の存在の根幹です。その仕組みを解明することは、神経・精神疾患の予防や治療、子供の教育方法の改善などにつながります。 これまで日本の脳科学教育は、医学・薬学・理学・工学系の学部・大学院で、分散的に実施されてきました。これに対して脳科学研究科は生理学や形態学、分子生物学を中心として、人文科学も含めた幅広い学問領域をカバーし、最先端の脳科学を系統的に学べる体制を整えています。5年一貫制のため修士の学位は出さず、博士(理学)の学位を授与します。 その組織は「分子細胞脳科学」と「システム脳科学」、「病態脳科学」の3分野に分かれており、合計8部門で構成されています。10名の入学定員に対して、8名の専任教員と12名の特定任用研究員が、横断的な体制で指導にあたります。8名の専任教員はいずれも、脳科学研究の第一線で国際的に活躍している研究者です。 日々の授業では実験を中心とする構成でチュートリアル方式を採用し、教材は基本的にすべて英文で、英語による討論・発表訓練を行います。また、学生は必要に応じて他の部門と共同研究をすることができます。この「研究のオーバラップ」も、脳科学研究科の大きな特長です。こうしたオーダーメイドの教育体制によって、次世代の脳科学研究をリードする研究者の育成をめざしています。女子大学の薬学研究科も始動 同志社女子大学も、高度な専門分野の学びとリベラル・アーツの精神をベースにした、大学院教育の強化を進めています。現在、3研究科・6専攻を擁する大学院に2012年4月、「薬学研究科」が加わります。 薬学研究科(医療薬学専攻)は4年制の博士課程で、入学定員は4名。大学・研究所や医療機関、民間企業、地方自治体などで医療薬学の発展に貢献できる優れた研究能力を有する高度専門的職業人と、その人材を育てる指導者の養成をめざしています。そのため医療現場で働く薬剤師も、社会人学生として積極的に受け入れます。 また、社会人学生が安心して研究活動に取り組めるように、「長期履修学生制度」という支援制度を導入しています。例えば薬学研究科の場合、入学試験出願時に申請すれば、仕事と研究の両立が難しいといった理由で、4年間で教育課程を修了できない学生に対して、最長8年かけて学位を取れるようにしています。2011ハイライト社会の要請に応える取り組み教育・研究、国際化推進、寄付事業、保護者・地域社会・環境への取り組みハイライト1教育大学院改革で世界をリードする研究者を育成脳科学・薬学分野で、新たな研究科を4月に開設脳科学研究科の研究領域と教育組織脳の働きを支える分子の役割とメカニズム▶シナプス分子機能部門▶神経膜分子機能部門▶神経発生分子機能部門神経細胞が作る回路ネットワークの成り立ちと作動原理を解明▶神経回路情報伝達機構部門▶神経回路形態部門▶神経分化再生部門神経細胞機能、回路機能の異常・破綻によって生じる様々な脳神経疾患の基本メカニズムを明らかにして、治療への道を開く▶認知記憶加齢部門▶チャネル病態生理部門連携分子細胞脳科学分野病態脳科学分野システム脳科学分野

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