学校法人 同志社 事業報告書 2010
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8──学長が目指される同志社女子大学像についてお聞かせください。 21世紀にふさわしいリベラル・アーツ・カレッジを建設することにより、良心を持って知識・能力を運用し、社会の礎となって活躍する自立した女性の育成を目指しています。その柱は次の3点です。 第一は「リベラル」にかかわることです。慣習や権威によってではなく、理性的思考により判断する自由な精神が大学全体にみなぎらなければならないと考えています。第二は「リベラル・アーツ」に関することです。今出川と京田辺の両キャンパスの学生、教職員が同志社女子大学というコミュニティーの中でともに学び、成長する「相互に学び合うコミュニティー」としての大学を目指します。最後は「カレッジ」に関係することです。教育と研究の質を向上させて、共同体としての大学を創り上げていきます。 本学は、創立以来「キリスト教主義」「国際主義」「リベラル・アーツ」を教育理念としています。この精神を脈々と受け継ぎながら、今の時代に合った教育改革を推し進めるために、現在、将来構想ワーキング・グループでその具体案を検討しています。また、ブランド管理委員会では、本学のブランドを明確にするためのアクションプランを検討し、実現することにしています。 具体的には、教職員合同の研修会、両キャンパスの交流の活性化、同志社精神を育むフィールドワーク、寮における教育の充実など、9つのプログラムを開発し、既にいくつかを実施に移行しました。これから毎年、進捗状況を検証し、また新たなプランを立てていくことになります。──伝統を守りながら、一方で独自性を打ち出し、厳しい時代を乗り越えるということでしょうか。 この不況下で、全国の女子大学のなかには志願者数を減らしているところも多くありますが、本学は志願者を増やしています。これは同志社ブランドが社会で広く認知されているからにほかなりません。それに加えて、これから女子大学ならではのブランドを確立することが最優先課題の1つです。 女子大学ブランドとは、きめ細かさがポイントになってきます。例えば国際教養学科では、全員が1年間の海外留学を経験しますが、その準備から帰国後のケアまで、学生一人ひとりをきめ細やかにサポートしています。こうしたことも強みになってくると思います。──ソフト・ハードの両面で改革が加速しています。 キャンパスグランドデザイン構想に基づいた整備を進め、2009年度に京田辺キャンパスの整備事業が完了しました。今後は、今出川キャンパスの整備に入る計画です。ソフト面では、10年度に文部科学省の「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点に、本学の「フィジー諸島共和国における自然・文化環境保全のためのESDカリキュラム・教材の開発」が採択されました。また、「国連グローバル・コンパクト」にわが国の女子大学として初めて参加し、10年度は本学で参加企業と合同の研修会を実施しました。 このように、社会の各分野と積極的にかかわりを形成しながら、社会貢献を果たしています。これは、新たな環境に出てそこから何かを学ぶという、新島襄のフロンティア精神を具現化したもので、11年度は「いつの時代も、新しきを生きる」を本学のキャッチフレーズにしました。──教育・研究面での今後の展開について、どのようにお考えですか。 本学は、リベラル・アーツを重視しながらも、2000年度以降、学部・学科改革を進めてきました。その結果、現在では5学部、10学科をそろえ、高度な専門の学びとリベラル・アーツの精神をベースに、学部・学科の枠を超えた幅広い教養を修得できる女子総合大学になりました。今後は改革の内実化を進めていく段階に入ったと認識しており、教育・研究水準をさらに向上させていきます。例えば、薬剤師や管理栄養士の国家試験での高い合格率を維持する。教員の博士学位取得率を向上させる。完成年度を迎える表象文化学部の認知度向上を図る。あるいは、学部・学科が単独で実施している海外での実習を組織化し、全学的な国際教育の柱にするなどです。 このような課題に誠実に取り組み、教職員が一体となって次の世代を担う女性を輩出していきます。同志社女子大学加かが賀 裕ひろお郎学長新島の精神を継承しつつ教育改革を推進し社会で活躍する女性を育成2010同志社女子大学長インタビュー

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